法話

目に映る世界を鮮明にして生きること

 「自分が何者で、自分が何を考えていて、自分が何をしたいのか分からないんです」
という相談がよくあります。あせり、不安、苛立ち、悲しみ…色んな感情が押し寄せてくると辛いものです。仏教はまず心を静めなさいと教えてくれるけれど、海に入って波しぶきを止めなさいと言っているようなもの。そんなことをどうやってやれと言うのでしょう…。

 滝修行を9ヶ月程、毎日続けたことがあります。8月から始めて4月まで。暑い8月は気持ちよく、12月からは寒さも痛さに変わり始め、3月頃にはさまざま見える物や感じるものが変わっている。おもしろいものです。手はしもやけで2倍ぐらいに膨れ上がっていましたが得るものは多かった。いくらしんどくても、その結果得られるものが大きければ人は頑張れるものです。あなたの未来はいま明るく照らされているものが想像されているでしょうか。

 弘元寺では今皆で「お袈裟縫い」をしています。袈裟とはお坊さんが衣の上に着けているもので、三衣一鉢といって修行僧が私有しても良い所持品4つのうちの3つにあたります。内訳は三種類の袈裟を3つ、ごはんを布施していただくための鉢が1つ。袈裟はそれだけ大切なものですし、もし仏教徒でなくとも手に取ってみればその功徳、神聖な重みを感じられるものであるでしょう。また袈裟は仏の体、仏の心と云われます。一針ずつ縫うことは仏さまをこの世に顕すことになり、僧侶に供養(布施)すれば自身の来世(次に生まれ変わる世)や子孫にもこれ以上ない功徳を廻らすことになります。また一度身に着ければ一切の悪を断ち、この上ない覚りを完成させるものです。
この度は6月末に行われる潅頂という儀式のお手伝いに来てくださる僧侶の方々に供養させていただきます。これを何百年も各お寺で大切にしていただきたいと思いますし、皆様がもし生まれ変わった時に手に取ることがあれば前世の記憶に出会えることがあるかもしれません。ありがたいことですね。

 さて、「ありがとう」が言えるようになれば、だんだん世界は鮮明になってきます。もしかすると、あなたはまだ言っている意味がピンと来ない…かもしれませんが、ある瞬間に世界は鮮明になるものです。滝修行も似た感覚を得られるもので、滝に入った後は目に映る世界がガラッと変わるもので、あら?これは同じ世界にいるの?とか、さっきまで私が見ていた世界は何だったんだろう…という声を聞きます。
それが一体何の役に立つのかと思う方もいらっしゃるかと思いますが、今見ている世界がすべて偽物で、何の役にも立たない物であったとしたら…それは恐ろしいことです。私は死の淵に立たれる方とお話をしていて、「いったい私は何をしてきたのだろう」とか、「私は何の為に生きてきたのだろう」という言葉を聴く時、何とも言えない気持ちになるものです。お分かりでしょうか?

 「ありがとう」が言えるようになる大切さ。
 世界を鮮明にして生きること。

 言葉を美しくすることは心(感情)を鮮明にしていくことです。滝修行などは体、五官(眼・耳・鼻・舌・身)の目が覚めるようなもの。礼拝をすること、ご祈祷を受けることは魂の汚れを落とすようなもの。正確には業を浄めることです。体の健康を考え食べ物を色分けしてバランス良く食べるように、「心」「体」「魂」とそれぞれ大切に生活してください。

   日切大師弘元寺 平成三十一年三月廿一日

《 お知らせ 4月 》
6、7日「府中 青目寺/御本尊十一面観音 ご開帳法要」
8日「お釈迦さま誕生日」お家でお祝いしてくださいネ

《 お祈り・行事案内》
27日「大黒天」23時   
31日「三宝荒神」20時  
30、31日 「お四国遍路」 44番~64番参拝
4月
2日「弁才天護摩」20時 
3日「毘沙門天」 朝5時半
7日「水子さま/地蔵護摩」10時 「法要の後、お花見」
お花見のあとに青目寺へ参拝します
9日「三宝荒神」20時
21日「大師縁日の護摩」 20時 写経奉納・月参り日
24 日「地蔵護摩」 10時 

《今月のひとこと》
あなたの心が世界を創り、
あなたの言葉が世界を認識している

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