「弁才天」
今月は十二年に一度の年月日に巳が付く三巳が巡って来ます。午前十時頃の巳の刻まで入れると四巳となりますが、三十日は夜八時から弁才天(弁財天)の護摩を修行します。いまでは日本の七福神のひとりとなった弁才天も、もとは古代インドのサラスバティ(Sarasvatī)という神さまです。聖なる川の化身とされ、流れるものすべてを司り、音や言葉、知識や音楽の功徳を持つので「弁才(弁舌の才能)」の天として信仰され、智恵・長寿・富を与えてくださるので後に「財」の字が当てられるようになりました。
巳の日が御縁日になるのは、この天は水辺に住むことから次第に龍神と結びついたためです。普段、弘元寺では経典に従って旧暦の24日26日(黒月九、十一日)をめがけて護摩を焚いています。
演説、芸能、音楽や智恵、長寿と福徳をいただけますようにと4/30、5/12日の両日に限定の御札を授与します。どうぞ十二年に一度の機会、ご利益を授かりにお参りください。
「光明真言」
人心が乱れ、鬼神(霊魂)が世にはびこる時、戦争や災害が起きやすい。まず言葉の乱れが世の乱れになるから弁才天さまを大切にし、そして人に限らずあらゆる生命の供養になる光明真言の力をもって、昨今の葬儀もしていただけない霊魂を拝み、世の罪障を照らし浄めたいと思います(十悪五逆諸罪を除滅す)。
またこの真言で加持された土砂をお墓に撒けば甚深の供養となり、家に撒けば悪鬼や災いは除かれる。諸天の寿命を延ばす功徳があるので神さまに捧げれば歓喜される。真言を聴けば病気が治り、水を入れたコップに加持された土砂を少し入れて上水を飲めばその人の業障が清まることで病気が平癒する(宿業病障を除滅する)など、その霊験譚は数知れず。
おん あぼきゃ べいろしゃのう まかぼだら まに はんどま じんばら はらばりたや うん
oṃ amogha vairocana mahā mudrā maṇi padma jvāla pravarttaya hūṃ
5月2日の20寺より夜通しの修行として12時間、ずっと光明真言をお唱えします。お寺に夜通し過ごすだけでも功徳があります。昼間によく休んでから参加されるのも良いでしょう。高い所から飛び込む気持ちとなって一心にご修行してみましょう。自分のため、世のために一緒にお唱えをお願いいたします。
「霊峰石鎚山・御開帳の護摩」
例年のお山修行ですが、令和7年は5月18日に修行します。梅雨入り前、新緑の山に入るのはとても気持ちが良いものです。神仏と自分の願いが叶うよう、また身心が清まるようにと祈りながら登りましょう。
そして今回はお山修行の前に本山の極楽寺において権現さまの御開帳護摩をいただきます。法螺が響き、太鼓の音が鳴り、御真言を唱えると、権現さまがお隠れになっている御簾が登っていきます。力強いお姿と眼に出会って感激するという方も多いことでしょう。
極楽寺、三体の権現さまのお名前は向かって右からこのよう配置されています。
無畏宝吼大権現(むいほうくだいごんげん)
石鎚金剛蔵王大権現(いしづちこんごうぞうおうだいごんげん)
龍王吼大権現(りゅうおうくだいごんげん)
・中央の石鎚金剛蔵王大権現さまは阿弥陀如来の化身であり、右手を上にかかげて三鈷杵を持ち、左手を拳にして腰におき、右足を上げています。いかに性根の悪い、性悪者でも、必ず導くという力強いお姿をされています。
・向かって左の龍王吼大権現さまは観音菩薩の化身であり、右手をかかげて八輻輪を持ち、左手を拳にして腰におき、右足を上げています。 このお名前と手に持つ法具は『仁王経』に説かれる、手に金輪灯(八輻輪と同義)を持つ龍王吼菩薩に通じており、手に持つ輪は正しい教えを顕し、怖い姿をしながらもだが間違い無く仏の教えを説かれていること(灯火)を示し、生きとし生けるものを愍れみ、瞋(いかり)・貪(むさぼり)・愚癡を除き去る徳を表象しています。
・向かって右の無畏宝吼大権現さまは勢至菩薩の化身であり、もともとは左手をかかげて独鈷杵を持ち、右手を拳にして腰におき、左足を上げていらっしゃいます。 このお名前と手に持つ独鈷杵は『仁王経』、無畏十力吼菩薩(無畏方吼)と同じであり、秘密の御真言と共にこの尊の徳を鑑みるに、激しい雷を示す雷霆であり、万物を育む水を示し、仏の智慧の水と光明を力強く顕しています。 ※現在安置されるお像は 右手をかかげ、左手を腰におき、左足を上げるお姿が一時的に祀られています。
この石鎚山において三体の権現さまそれぞれに名前があるのは天河寺の法燈を持つ極楽寺だけのようです。
前神寺さまは三体ともすべて石鎚大権現と呼称され、尊像と御軸で二種類の形があり、軸物は現在の極楽寺と同じ様相ですが左手は剣印です。本地仏は特定されないとするが和讃には釈迦如来としています。
横峰寺さまは一体のみをお祀りし、権現さんと呼称し、本地は阿弥陀如来としています。また平安末と伝する形像は右手に独股杵を持ち、左手は垂れ下げて施願印のように五指を開き下しており、右足を上げる。
前神寺、横峰寺においては一真言のみを唱え、その真言は極楽寺における石鎚金剛蔵王大権現の真言と同じです。
また極楽寺では腰の手が剣印でないこと、様相の意義について言い伝えがあります。
その他、左右の配置、挙げる手の左右が違うなど地方によっては違う例も見られます。
令和七年四月二十一日
毎週日曜「朝のお勤め」朝6時~
24日(木)「甲子大黒天 一時千座法」23時~
30日(水)乙巳年 辛巳月 己巳日 三巳弁才天
「弁才天 護摩・大般若」20時~
5月
2日(金)「12時間 光明真言三昧」20時~
3日(土)朝8時結願。夜通し拝むので参加ください
4日(日)「滝修行」朝5時出発 6時現地
「水子供養/地蔵護摩」10時~
9日善曉(ドイツ人)入山 10日 24日秘密儀式(非公開)
11日(日)「無縁仏供養」朝6時 於福山霊苑
12日(月)辛巳日「弁才天 護摩・大般若」20時~
18日(日)「霊峰石鎚山 入峯 御開帳護摩」
申込は「こちらをクリック」 お早めに
21日「大師御縁日 護摩」10時、20時
『仁王経』に触れたので、この機会に比較表を以下に示しておきたいと思います。
今年は6月15日 伊勢善光寺(天台宗)さまを会場に「仁王会」を厳修します。
詳細はまた掲載します。
⚫『仁王経』旧訳・新訳の尊形について
・旧訳『佛説仁王般若波羅蜜経』受持品 第七(T8 No245 833上段)
「五大力菩薩」 「持物」 「想定される方位」①廣澤流・安然 ②安流・高野 ③高見寛恭(色)
「金剛吼菩薩(金剛手)」 「千宝相の輪」 ①東 ②中 ③中(白)
「龍王吼菩薩」 「金輪灯」 ①南 ②南 ③東(青)
「無畏十力吼菩薩」 「金剛杵」 ①西 ②東 ③南(十方・黄)
「雷電吼菩薩」 「千宝の羅網」 ①北 ②北 ③西(赤)
「無量力吼菩薩」 「五千の剣輪」 ①中 ②西 ③北(無量吼菩薩・黒)
この想定される方位というのは新訳が訳出されてから、そこで説かれる方位に対応させる為に後から考えられたものであることもあり、どれが正しいとは言い切れないところがあります。むしろ方位を付ける方が無理があるというなか、あえてここで私の考えを述べると中央、北、東、南、西の順番でも良いと考えています。 その理由は、まず金剛吼菩薩の千宝相の輪は大日金輪に対応して中央。龍王吼菩薩の金輪灯(輪輻)、釈迦金輪の八輻輪に対応して北。無畏十力吼菩薩の金剛杵は東。雷電吼菩薩の千宝の羅網は宝部とみて南。無量力吼菩薩の剣が法部とみて西。
金輪灯は、上醍醐の図には輻輪を横にしてその上に灯火を示している。金輪そのものが灯火のように光を起こしているものなのか、金輪の上に灯明があるものなのか、経典には詳説されておらず、具体的な形は分からない。
千宝の「羅網」とは、宝珠を網列ねた網であり、『陀羅尼集経』には二十一種の供養物の第二十に宝真珠網といい、『弥勒上生経』には時に小梵王、天衆宝を持して以て羅網となし、帳の上を彌(わたり)覆うと説き、供養物や荘厳具とするものです。
・新訳『仁王護国般若波羅蜜多経)』奉持品第七 (T8 No246 843中段)
「方位」「五方菩薩摩訶薩衆」「持物」「光色」
東 金剛手菩薩摩訶薩 金剛杵 青色光を放つ
南 金剛宝菩薩摩訶薩 摩尼 白色光
西 金剛利菩薩摩訶薩 金剛剣 金色光
北 金剛薬叉菩薩摩訶薩 金剛鈴 瑠璃色光
中央 金剛波羅蜜多菩薩摩訶薩 金剛輪 五色光
・『仁王護国般若波羅蜜多経陀羅尼念誦儀軌(仁王経儀軌)』
五方菩薩は同様、更に菩薩と教令と同一体と説く。光は新訳に同じ。
「五方菩薩」 「菩薩(法輪/真実身)」 「教令輪/威怒身」 「眷属」
東 金剛手菩薩(金剛杵) 普賢菩薩 降三世金剛(四頭八臂) 持国天
南 金剛宝菩薩(金剛摩尼) 虚空蔵菩薩 甘露軍荼利金剛(八臂) 増長天
西 金剛利菩薩(金剛劔) 文殊師利菩薩 六足金剛(手臂各六) 広目天
北 金剛夜叉菩薩(金剛鈴) 摧一切魔怨菩薩 浄身金剛(四臂) 多聞天
中 金剛波羅蜜多菩薩(金剛輪) 転法輪菩薩 不動金剛(二臂) 帝釈天
新訳の請来までは、仁王会では五大力菩薩が懸けられ拝まれていました。
また真言宗の各流、天台宗において「仁王経法」の本尊、印真言も様々違うのですが、それはここには載せられません。また陀羅尼についても小野流、広沢流で配する梵字に特徴があります。