あなたは花や石と会話をしていますか?
広島県で育った人は聞いたことがあるだろうCMに、
「大事に、してもらいなよ。」というフレーズがある。尺八演奏に、如何にもといった職人の男性が箪笥に語りかける。この職人の心情が分かるか、分からぬか。 現代はAI(人工知能)の発展により、訊いたら答え、更にはまとめて分かりやすく視覚化もすれば、AIエージェントとなれば自動で作業や仕事までしてくれる。さすがにこの文章は私の自作であるが、AIに過去の情報を全て読み込ませれば、あたかも私が書いたような文面を作成してくれるようにもなる。便利な世の中になったもので、私は学習や経典解釈など強力なサポーターとして積極的に活用している。
一方で、AIを使えない領域も沢山ある。体を鍛えること、誰かと遊んだり、お茶をしたり、自分の代わりに「こんにちは」の挨拶をAIが自動でしても、それはこんにちはの「本質」では無い。その後に続く、「ご機嫌はいかがですか?」という相手への気遣い、これが自分の心に起きていなければ、それは挨拶とは言えない。もっとも、そういった相手、そう思える家族、友人が身近に喜んで生活している環境を作れるよう努めなければなりませんし、その基礎が相手を気遣う「心」であることに気付かなければなりません。心に思うから言動になる。心に無いことは言動にならない。西洋文化は伝統的に「知」こそ最高のものと考え、感情や心よりも知性を大切にするところがある。対して私たちは「心」こそ大切なものと考えてきたように思います。
さて、「植物と話ができないようでは宗教者としての資質がない」と語られたのは高野山大学の田中千秋先生。方丈様の時代の方だが、信仰者としての手本を語られる先生であったと聞く。私も石を石と見ているようではダメだと弟子に言いますし、石が語りかけてくるようになるまで修行を積まなければならぬものと考えている。石鎚の山が語り、瓶ヶ森の水、朝日、雲海が教えてくれる。そういった修行をしなければなりません。 ただこれは自然崇拝、精霊信仰のアニミズムとは少し違う。修験道が観ているものは大日如来の説法、呼吸、活動であり、お大師さまこと弘法大師が体験された明星が飛び込んでくる事象も宇宙・天体を貫いた仏の大慈悲と自身の生命活動の一致から来るもう少し深い所にあるものでしょう。
お大師さまが経験されたのは、自身一切を投げ出す所によって得られるもの(無我の境地)であり、多くの人が感じるアニミズムは自己愛(自我執着)の中で生み出される妄想ストーリーに近いのではないでしょうか。「植物と話ができないようでは…」といった言葉も前者のものであり、おままごとでは無い。修行者の体験する世界とは、そういったものである。
冒頭、タンスとの対話をする職人の話は無我や我執の如何はさておき、とても大事な心であると思う。自分の作ったものに話しかける、畑をしていたら野菜や花に語りかける。すべてのものに生命があって、対話をする。自分の世界だけで生きない。 いや、この世はそもそもあらゆるものとの縁によって成り立っている。その真実・事実に立ち帰って思考すること、心を動かすことが大切。科学的だ、非科学的だとすぐ口にする人間に限って、多くが公平な世界を見ようとせず、自分世界のルールで見ようとはしていないだろうか。仏教という宗教人の方がよっぽど世界を公平に見ようとしていると感じる。
しかも、その公平な世界というのは「生の世界」に限ったものではなく、「死後の世界」、霊魂、先祖の霊、神、仏、自然界、天地、宇宙といった広大なものに対しても境界線を引いたものでは無い。更には普通だと隔絶された世界を行ったり来たりすれば、此岸と、彼岸と、そのどちらでも無い世界も知覚する。日本人は古来より神祭り、先祖祀りを通じてこの曖昧な世界を体験して来た。どっちつかずな言葉や態度をする日本人気質は、あの世を遠い世界として来なかった所に由来すると私は思っている。世界の舞台や、経営の舞台に立てば素早く的確な判断が必要となるが、それでもこの日本人の「どっちもある」といった感覚は、正義の中にも悪があり、悪の中にも正義があるといった事実を肌感覚、実感として教える。
世界を見ればガザ停戦は喜ばしいことだが、これからも分断主義となる思考、唯一の正義が勝つといった悪魔の思考を癒やしていかなければならない。近江商人の三方良しを超えた心を世界で創造できるように。三方良し、四方良し、五方良し、全方良し。。
令和七年一月二十一日
1月26日(日)「赤磐市 普門院 柴燈護摩」10時~
1月31日、2月1日、2日「星供祈祷」朝5時~
2月2日「水子供養/地蔵護摩」10時
2月2日「節分祭・護摩・豆まき」20時
※家族の星供、申込はお早めに!
21日(火)「大師御縁日 護摩」10時、20時
23日(日)「府中市 十輪院 柴燈護摩」13時~
23日(日)「甲子大黒天 一時千座法」23時~
※「厄除け早見表」をご確認の上、厄除祈祷を申し出ください。