法話

湯気と湯の狭間に居て、私が揺れ動く時

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 大自然の力に畏怖を懐き、水の恵に感謝が沸く。どうぞ、この言葉を二度読んでいただき、年の瀬の雪降る景色を眺めながら、自分にとって自然とは畏怖と感謝の存在であるのか。どうかを今一度確認してみてはいかがでしょう。
 私、温泉とか秘湯とかいう言葉にはめっぽう弱い。広島県備後州というのは気候穏やかであるものの、活火山が無いために温泉には恵まれていない。もっとも活火山の無い和歌山や有馬に温泉が湧くのは地球の表面を覆う多くの岩盤、プレートに秘密があるようだ。
 地中深くから湧き出るお湯には不思議な力がある。石もそうだ。両手を拡げても届かない石に触れても妙(たえ)な躍動、リズムを感じるのだ。また湯や石だけでなく、海、大地、木、空に染み込んでいくと…生命が忘れていた根源的な活力が溢れ出てくるように感じる。 これは山伏修行、修験道の祈りのなかではいつも感じることで、修行の中では小石も一枚の葉も、そのままに仏の説法をしていることを観ずる。塵の一つにも、仏そのものの不思議を感ずるのだ。
 欲(俗)にまみれた生活という言葉。これは当人にとっては自分を楽しませて生活しておるつもりであろうが、本来自由であり無限の可能性を秘めた眼、耳、鼻を自己中心的なものだけに限定して生活する姿は、実に勿体ないことである。己の自由を外(環境)に求めて、内なる囚われにずっと気付かない。だが更にこの内なる囚われも、己が内を見ている限り、己に囚われてしまって内なる本質に気付けないのである。
 今から一八〇〇年程前のナーガールジュナこと龍樹菩薩(りゅうじゅぼさつ)は『中論(ちゅうろん)』という著書から、一つと思っているものは、ただ一つのものだけで成り立ってはいない。相互関係や繋がり(相互依存)の中で今が、それが、成立していると縁起、無自性、空の思想を広めた…。より詳しくは著書を読んでいただきたいが、更に無自性という語がそもそも有性(うしょう:存在すること)を否定していれば、本より「ある」という事は何一つ成立しないという結論を導き出しもするわけで、凡人からすればこの考察が何を導き出すのか分かりにくいものだが、成立しない故に成立している相の考察も段々見えてくる。もう一つ言えば、世俗の二元論的、断片的な物の見方から観察する真理には限界がある。だが、相互関係の中で断ち斬り且つ断ち切らずに紐解ける者は真理に近づくのである、云々。
 さて明日は冬至。今年の日本の冬は益々厳しさ増しているように感じ、来年の一年を占う「冬至占」は如何様に現れるのか。また来月にお伝えしたい。大事な占いをする時には意識を研ぎ澄ますだけでなく、全身の力が抜けきっている事も大事で、導入としてはあらゆる恩恵に生かされている自身(縁)を自覚するのが有効だ。日々に恩恵感謝の自覚を増やせば気運も良くなる。
私の偏った思い込みかもしれないが、東北の冬や山々を知る者と山陽地方の生活圏では「自然界の恩恵」といった意味の質量がまったく異なると思うのである。人間は見る景色によって感性も、思想も、生きる術も変わるものであろう。
厳しさがあるからこそ恩恵をより深く感じることが出来る。これはあらゆる場面で排除してはならない一面に思うのであるが、一部の方にはここで厳しさこそ正義だと単純な勘違いも起こして欲しくない。厳しさは与えられるものがあってこそ成立するものである。
 自然界、最大恩恵の一つ「温泉。。」。大地と水の恵みに始まり、火と風(物事を変化させるエネルギー)の力も受け止められる。 これはいい! 思わず文章に心の声が漏れ出た。 。も湯から浮かび出る気泡に見えてくる。温泉のことを考えると堪らない。 はぁ~
 肩まで温泉に入る。熱が体に移り火照(ほて)り始める。体を湯から半分出すと「狭間(はざま)」を感じるのだ。
自分が、湯に染まるか、外気に染まるか。身の振りように揺れている。 ただ玄人は違う。自分など忘れてしまい、隔てること無く「場・時間」そのものに溶け込んでしまうのだ。これこそ恩恵を最大に感じる秘技であろう。そして私は、湯が私に染み込むのか、私が湯に染み込むのか、仏教で己を考えるのである。
 厳しさの中にあればこその恩恵に学ぶことは多い。
 来年も、前を向いて参りましょう。  

令和四年十二月二十一日

《ご修行案内》
31日(大晦日) 「水行」 23時15分~

正月元日 「鳴釜神事(鳴動護摩)」0時~
「初参り祈祷」 9時30分~15時まで
※30分毎に心経太鼓・金幣加持の祈祷をします。
   ご家族、友人と募りお詣り下さい。

5日(木)「大黒天 一時千座法」23時
8日(日)「箕島八十八カ所参り」朝8時~昼過ぎ
11日(水)「弁才天 初護摩」20時
21日(土)「大師御縁日 護摩」10時~、20時~

☆2月3日(節分)「星供」の申込は1月末迄に!

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