法話

神さまへのお供えは、命へのお供え。

 形のあると形のないもの。神さまへのお供えには二種類あります。御神酒や御洗米の形に見えるもの。そして形には見えないお経、気持ちによるお供え。実はこちらがとても大事といいます。

 供え物とは感謝の心を捧げること。命をくれてありがとう。私たちは何一つとして自分の力だけでは生きていけない。命は保てない。親先祖、毎日の食事。あらゆる恩恵によって生かされています。神さまの目の前に捧げる供え物、食卓のお米も野菜も同じ。畑を作ったのは人間だけれど、あとは神さまの恩恵によってもたらされたもの。これをまた神さまの御前にお供えして、感謝の心を捧げる。。。

これをごく自然なことだと思える人と思えない人もいらっしゃるでしょう。頂いたのだから、それを献じて感謝の意を陳べる。大自然と調和し、恵みに感謝できるものはまた同じくそれらの恵みを頂けるものです。実際に行っていると分かってくることもあるでしょう。神さまの御前に供える収穫祭など、日本という国はそうやって元気を循環させているようです。

 自宅で行う神さまへのお供えも一緒です。しかし実際の所、神様方は供え物(御神酒、水、塩、御洗米など)が無いと死んでしまわれるのでしょうか。いいえ、神さま方は人間のように食べ物がないからといって死んでしまうことなどありません。では何故、毎日お供え物をするのでしょう・・・?
それは、この恩恵を頂く神さま方と私たちは常に一緒にあります。共に生かされておりますという感謝の気持ちを形と共に供え申し上げるのです。この恵み、命、ありがとうございます。。と心から思い、それを伝えることが重要であるからです。

 身心を浄め、神さまに心を向け、お伝えする、また受け取る。。

この繰り返しが神さまとのつながりを深くし、それにしたがって自身、家族、家庭の守護へと自然とつながるのです。日々のお供えは大切です。神棚のある家は神さまが住まわれる家。そこに住む家族を自然と守って下さり、繁栄を呼び込む家となります。

 日本の神さまの多くはもと人間でいらっしゃいます。だから日本語で喋っても十分通じますし、私たちにとても身近によく理解して下さいます。ただ神前においては小声で申し上げるべきという原則があります。これは俗世界にある人間同士の会話や言葉からは離れたものを扱うべきとするからです。小声でも聞こえるの?と心配はいりません。仏教でも天(神々)は神通力を持っていると教えるように、神さま方は小声でも十分に私たちの声が聞こえます。それどころか、心の姿までよく見通されるもの。神前にある鏡のごとしであり、神さまに隠し事はできません。だから身を清め、心を浄め、正直に言うのが一番良いのです。
身近な例えをすれば神社、神前に参ることは神さまとデートをすること。神さまと心を十分に通わせる。そしてお供えしたものをいただくのは神さまとのお食事会になります。神さまとデートをして食事をする。神道とはこれであると私は習ったことがあります。深い意味があるようです。

 お祭りでは直会(なおらい)といって、神さまに供えた御神酒や神饌を祭に関わった者、皆で頂きます。広辞苑では「斎(いみ。神事に慎むこと。心身を清浄に保ち慎むこと)が直って平常にかえる意」と説明しますが、丁寧にお供えをして、心からの会話をし、それを食べること。これが重要な意味を持つのです。
 また斎とは、身心を清浄に保ち慎むことと説明するように、きれいな服を着る、手水で身を清める、火打ち石、御幣を振って身やお供え物を清めるといった、清める行為が大切。ちなみに家でお風呂に入って身を清め、そのまま神さまの前に向かうのであればまた鳥居前で手水を使う必要はありません。 いずれにせよ、神さまに向き合うことは清浄を大切にします。神さまに供え向ける物を人が生活する物と一緒にせず、神さま専用のお皿や道具を準備しますよね。神社などでは神さま専用の竈を準備します。普通の家ではそこまでは出来ないので、火打ち石や小さな祓い幣を準備したり、せめてもの思いから道具を使い分ける。
ここまでが形のあるお供えに関する話ですが、既に形のないものも多くあったように思います。神さま祀りに本来形や形式はいらないのです。ただ 神様と向き合い、念じること。神さまと通じあい、つながることが重要なのです。

 さて形のないお供えは「般若心経」、これが一番の栄養分になると言います。これは「法(真理・道理)」を神さまに供えることであり、微妙で奥深い仏法を食べ物の美味に喩えて「法味」とも呼びます。神さまが法味を嘗めて、益々威光自在となるように…と昔の日記にも表現されます。ここに神さまと仏教がずっと一緒に生きてきた理由の一つがあるわけです。神さまを大切にし、また同時に仏教に学ぶことは必ず日々の生活を潤し、自分の命の姿に気付くものとなります。神さま、仏さま、ご先祖さまを大切にしましょう。
 善い哉。善い哉。

   日切大師弘元寺 平成廿九年十月廿一日

《 お祈り・行事案内》
 22~28日 前修行 毎朝5時 一緒に修行しましょう
 24日 地蔵護摩 10時 感謝の護摩
☆28日 大祈祷会 19時 御加持を受けられます。
☆29日 柴灯護摩(入仏記念法要) 10時より 

11月3日 毘沙門天 20時 願望成就・智恵・繁栄
 5日 滝修行  5時寺出発 コンビニ5時半 
    水子地蔵 10時 水子・諸霊供養・護摩
 12日 弁才天護摩 20時 願望成就・良縁
 21日 大師縁日の護摩 20時 写経奉納・月参り日

《 ひとこと 》
 失ったものより残ったものを考えることも必要である。

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